コレはダメ!要注意な結婚写真の要望とは?実は損をしているかも。

撮りたい写真、たくさんありますか?

撮りたい写真がたくさんある場合には、要望書や指示書を出す場合がありますよね。ですが、なんでも要望に出せるわけではありません。むしろ要望に出してしまうと、あなたが損をする可能性があるものもあるんです。今回はそんな、要注意な要望内容についてお話ししていこうと思います。

撮影許可が出ないこともある

結婚式場には、撮影していい場所と撮影してはいけない場所があります。Instagramなどで見たことがある場所でも撮影禁止になっている場合もあります。事情は様々ですが、ほとんどのケースにおいて、ちゃんと理由があります。

例えば他のお客様が使っているスペースを邪魔してしまう場合。大きな結婚式場では何組も同時に結婚式で行えるため、あなた以外にも結婚式をあげているカップルがいます。結婚式場はそういった複数のカップルが鉢合わせてしまわないよう、動線をコントロールしています。しかし、それが撮影したい場所と被ってしまう場合があります。そういった場合には他のお客様に迷惑がかかってしまうので、「撮影できません」と言われてしまうのです。

レストランのスペース

レストラン営業しているようなお店でも同じことが言えます。大きなレストランでは、結婚式をするスペースと通常営業でお客様が食事をするスペースが同時に存在する場合があります。結婚式で使用しているスペースを外れてしまうと、食事をしに来ているお客様に迷惑がかかってしまう場合があります。撮影は場所を多少選挙しますし、撮影のための声かけなどでお伴します。何よりドレスを着て歩くのでかなり目立ってしまいますから、静かに食事をしたい方には結構迷惑かもしれません。そういった配慮の観点から、レストラン側は撮影場所を制限するケースがあるのです。

納得できない場合もあるでしょう

しかし、なかなか納得いかないケースもあるでしょう。例えば持ち込みカメラマンが撮ってはいけないけれども、提携カメラマンが撮影してもいいと言ったようなケースです。 こうした式場の指定に納得がいかないのも分かります。僕達カメラマンとしては新郎新婦さんのために写真を撮ってあげたい、という気持ちは十分にあるのです。しかし、ここで無理をしてしまうと、損をしてしまうことがあるので注意しましょう。

要注意な要望

結婚式場には、結婚式当日以降ほとんど行かないといったケースも多いと思います。二度と行かないという前提を踏まえて、ゲリラ的に無理を通してしまおう、と考えるカップルもいるのです。「私達は今日しか会場と関係がないので、無理して撮っちゃってください。カメラマンさん。」こんな感じで言われるのです。確かに場所によっては、ささっと入って撮影して離れる、といったことも可能でしょう。しかしこれが要注意。その場で無理やり撮ってしまうと、いろいろ問題が発生するのです。

発生する3つのデメリット

カメラマンから見たデメリット

そもそもあまり綺麗に撮れません。会場スタッフが目を離しているうちに撮影する。といった短い時間では、きちんとポージングもできません。構図も整えることが難しいでしょう。結果としてあまり綺麗ではない写真になってしまう可能性があります。こだわりのカットがあって撮影したいのに、これでは本末転倒ではないでしょうか。 また新郎新婦さんと違って、カメラマンはまたその会場に来る可能性があります。いえ、むしろ来ると思っていいです。一度このような違反をしてしまうと、最悪の場合出入り禁止、いわゆる「出禁」をくらってしまいます。そうなった場合、次回以降でその会場で撮影予約を頂いていたお客様の撮影が難しくなってしまいます。スタッフとの関係も悪くなってしまうので、いいことはあまりないのです。

会場から見たデメリット

会場からしても良くないことはたくさんあります。例えば新郎新婦やカメラマンの印象そのものが悪くなってしまう点です。すると、この先受注する結婚式に対して規制が厳しくなっていく可能性があります。「持ち込みカメラマンは決まりを守らない」「マナーが悪い」「Instagramから集客した新郎新婦は決まりを守らない」など色々悪いレッテルが貼られてしまいます。会場としては、他のお客様に迷惑をかけるわけにはいかないので、禁止事項をたくさん設けて運営することになります。最悪の場合、一切要望は受け付けません。といった対応にもなるでしょう。

新郎新婦から見たデメリット

最後はあなたから見たデメリットです。結婚式場は色々なスタッフがいます。もちろん全員人間です。人間が行っている以上、(どんなプロでも)あなたの印象がサービスに影響する可能性があります。考えてみてください。

「ルールを守らない新郎新婦だな」「マナーの悪いお客だな」そう思われている場合と、「なんていい人たちなんだろう」「スタッフにも親切だな」と思われている場合では、対応が変わるのは明らかでしょう。スタッフから最も良いサービスを引き出すには、むしろスタッフから好かれてしまうことが最も効果的と言えます。媚を売ったり、ダーティな手段に出ろとは言いませんが、少なくともマナー違反はするべきではないと思います。

悪い結果

一度言うことを聞かずに式場に迷惑をかけてしまうと、その後受けられたかもしれないサービスを棒に振ってしまうことになります。こうしたデメリットを見た上で、ゲリラ的に撮影したいカットにそこまでの価値があるのか、考える必要があるでしょう。

解決策はたったひとつ

解決策はたったひとつかありません。 それは事前にプランナーさんや会場と相談し、承諾を得ておくことです。

ポイントは、しっかりとそこで撮影したい熱意を伝えること。自分たちがどれだけその写真を望んでいるのか、どうしてもとりたいという気持ち、それらをしっかり伝えることができれば、撮影許可を取ることもできるでしょう。レストランのお客様がいないタイミングを見計らって、そのタイミングだけ特別に使わせていただく。などの対応もあるかもしれません。 もちろん、もともとダメなことですから、必ず許可がもらえると思わないでください。あくまで可能性です。しかし、ちゃんとそこでお願いをしておく事で、可能性はゼロではなくなります。

少なくとも、熱意がしっかり伝われば、代わりのおすすめ撮影ポイントなどを教えてもらえる可能性も高まります。相手も人間ですから、新郎新婦さんの要望を断るのは少し引っかかるものがあるのです。「許可は出してあげたいけれど、事情があってどうにもならない。でも、できるだけ満足してほしい。」そう思っているのです。(そうあってほしいと思います 笑)

これを知っても、「どうしても撮りたい」という気持ちが収まらないのであれば「失うもの」を考えるようにすると効果があるでしょう。心理学的に、人はプラスで受け取れるものよりも、今持っているものを失うことを恐れる性質があります。ゲリラで撮影してしまうことで、その後に取る予定だったすべてのカットを失ってしまう可能性、受けられるはずだったサービスを失ってしまう可能性、そういったものに着目してみるのです。そうすることで、多少なりとも気持ちを落ち着けることができるでしょう。

カメラマンから問い合わせるべき?自分でやるべき?

素朴な疑問として、「カメラマンから会場へ許可が取れないのか?」と思う方もいるでしょう。しかし、結論から言っておすすめしません。理由は二つ。

一つ目は、会場とカメラマンは無関係だからです。持ち込みカメラマンの場合、カメラマンと式場には何の関係もありません。式場と提携している写真会社のように、子会社であったり、契約を結んでいるわけではないのです。あくまで契約は「新郎新婦と式場」「新郎新婦とカメラマン」という全く別のものなんです。

例えば、マクドナルドで買ったハンバーガーをセブンイレブンのイートインで食べてもいいか、という許可を取るのと似ています。マクドナルドからセブンイレブンに電話をするのはおかしいですよね?ハンバーガーを買った人がセブンイレブンに確認をするべきです。

ハンバーガーのたとえ

二つ目は、カメラマンから連絡をして許可が取れる可能性がかなり低いためです。式場からして「お客様」は新郎新婦さんなので、新郎新婦さんからの連絡の方が確実なのです。

まとめ:撮影場所の許可は打ち合わせが大切

いかがでしょうか。結婚写真を撮影するには、撮影するための「場所」が絶対に必要です。憧れのロケーションや、フォトスポットがあるのはとても良いことですが、その前提には「撮影の許可」が必要になります。Instagramやネットで見たからといって必ずそこで撮影できるわけではありませんから、とりたい場所やとりたいものがある場合は、念のため必ずプランナーさんや担当の方に相談しておくといいでしょう。

良い結婚式ができることを応援しています。

KOBATONE小林嘉明

僕は、クレームに支配された婚礼業界を変えたいと思った。

とにかく大変だった。

先日、表参道にある結婚式場で僕は撮影していた。

いつものように、いわゆる「持ち込み」で撮影に入っていた。会場からは煙たがられる存在だと思う。事実、この会場では持ち込みを禁止していて、持ち込みをするには、カメラマンは新郎新婦のゲストという「てい」で入らなくてはならない。この日もそうだ。僕は普段、新郎新婦に対して、持ち込み禁止の会場へのゲストとしての持ち込みを奨めていない。しかし、いろいろな事情がありこの日は承諾した。まあ、そのあたりは本筋と関係ないので置いておこう。とにかく、僕は持ち込みとしてその場にいた。しかし、どうにもスムーズに撮影ができなかった。それはなぜか?

会場が気にしている部分と、僕が気にしている部分が違う。

コレに尽きると思う。そもそも、持ち込みカメラマンは撮影がやりにくいもの。なぜなら、会場側からすると僕たちは嫌な存在だから。多くの場合、邪魔されたり、圧力がかかったりする。撮影ができないように極端な時間の制限をかけられてしまうことも多い。ところが、この日は違うところにやりにくさがあった。原因は、メイクさんやアテンドさんとのコンビネーションだった。

この違いをわかってもらうために、少しだけ写真の話をしよう。

カメラマンによって違う撮影スタイル

撮影スタイルはカメラマンによって違う。それは「写真」というものが、撮影者と被写体の個性を強く反映するものだからだ。明るい写真が好きな人がいれば、反対に暗めのトーンが好きな人もいる。鮮やかさに惹かれる人がいれば、落ち着いた色のくすみに感動を覚える人もいる。それぞれの好きなテイストに近づけるため、僕たちはあの手この手で理想と現実の距離を詰めていく。

僕の場合は、それなりにキッチリした写真が得意だ。言い換えるなら、硬めの写真。なぜなら、ずっと写真室で修行していたから。写真室は1枚の写真に10〜15分くらいの時間をかけて、服の皺まで丁寧に直して撮影するような場所。婚礼業界では一番丁寧に写真を撮る場所だと思う。しかし、「これが一番いい写真か?」と問われたら、たぶん「違う」と答えると思う。

木を見て森を見ず

「木を見て森を見ず」という言葉がある。細かい部分に目が行き過ぎて、全体像がつかめていないことを指す言葉だ。まさに写真室の写真はこれが弱点だと思う。照明のあて方、構図、服の皺にこだわるのは良いことだけれど、あまりにそこにこだわりすぎているように感じる。

僕達が撮影しているのは人間だ。しかも素人の人間だ。モデルじゃない。

新郎新婦はモデルとしては素人なので、僕達カメラマンがポージングを教える。手の角度だったり、足の向きだったり、力の入れ具合なんかを手際よく伝える必要がある。器用さは人それぞれなので、パッと理解して出来る人もいれば、そうでない人もいる。また、「理解しやすい伝え方」も人によって違う。やってみせたほうがすぐ理解できる人、言葉のほうがわかりやすい人、いろいろだ。僕はお客様の性質を観察して、そのお客様に(心がけとして)合った方法でポージングをつけるようにしている。

時間とともに崩れるポージング

ほとんどの人は一つ一つ順番に教えないと伝わらない。

「足をこうしてください。」「手をこうしてください。」「胸の向きはこうです。」「顔はこっち。」「腕組みましょう。」

こんな感じで順番に組み立てる。新郎新婦としては非常に肩が凝る退屈な時間だ。ここをどれだけ退屈させずに、直感的に理想の形に近づけるかが僕達カメラマンの腕でもある。かなり重要な能力だ。そしてここで、忘れてはならないことがある。それは、「指示した内容は必ず崩れる」ということ。

足、体、手、胸、腕、顔・・・なんて順番で直していたとしたら、腕くらいを直している時には足が崩れている。崩れている、というのは指示した形ではなくなっているということ。プロのモデルでもない限りこの維持は非常に難しい。だからこそ、僕たちはスピーディーにポージングを組み立てる能力が必要になる。

表情も時間とともに悪くなる

早いほうがいい理由はそれだけじゃない。この難しいポーズを長時間しているようにしている新郎新婦自身の「表情」が悪くなってしまう問題がある。ただですら緊張しているし、いつもは着ないものを着ている。そのうえ変なポージングまでするのだから、体感時間はかなりのものになる。僕達カメラマンの手際が悪ければそれは何倍にもなる。結婚式で浮かれているとはいえ、時間とともに表情の明るさはどんどんなくなっていってしまう。僕たちがポージングを作り始めた瞬間から、言ってみれば表情の「鮮度」のようなものが失われていくのだ。

しかし、ポージングやドレスの直しを適当にすることは出来ない。やはり、「最低限のキレイに見せるポイント」というものがあって、それを踏み外してしまうと素人と同じような写真になってしまうし、誰がみても第一印象で「きたない」写真になってしまう。

時間と丁寧さのバランス

では、どうするか?答えは、「全てのポイントに優先順位を付ける」そして「優先順位の低いものは切り捨てる」さらに「最も効率の良い順番で組み立てる」こと。たとえば、ドレスの小さい足元のしわ1つを直すよりも、ドレスがどちらに流れているか?という大きな問題の方が、写真を見た時に感じる印象への影響が大きい。だからこの場合、ドレスの小さなしわは無視する。それよりもダイナミックに自然な方向にドレスが流れているのかを意識する。

ドレスの細かいしわを一つずつ伸ばしてもいいが、ドレスはひとつながりの大きな布であるため、必ずどこかにしわは出来るものだ。「必ずドレスの縁は地面についていないといけない」という価値観が写真室出身のカメラマンには多く、彼らはそれがキレイの基準になっている。しかし、そういう直し方をしていると最終的にシルエットがおかしくなる。まさに、木を見て森を見ず。というわけだ。

クレーム対策と婚礼業界

もともと、僕もそういう価値観の写真室で働いていた。地面とドレスの間に少し隙間があるだけで、まるでこの世の終わりかのように、よく先輩から怒られたものだ。しかし、僕としては全く納得いかなかった。優先順位がおかしいと思っていたし、そもそも、そんな部分を気にするお客様はいないと思った(実は少しいるんだけど)。だけど後になってみればそれも当たり前のことだと気がついた。なぜなら、僕に指導していた先輩たちは「クレームを避けるため」に仕事していたから。言い換えれば、「上司に怒られないように」仕事をしていたのだ。

企業のブラッシュアップ

長く写真をやっていると意外な意見(平たく言えばクレーム)を頂くことがある。なのでさっきの「ドレスの直しが汚い」というのもあり得る。写真室にはそれぞれに写真に対する基準があって、それに基づいて写真を仕上げている。お客様からの意見があればそれを取り入れ、どんどんブラッシュアップしていく。だからほとんどのお客様には気に入ってもらえる基準になっている。だけど、これは全てのお客様にマッチするわけではない。どんなに平均を取ったところで、全ての人間に気に入られるものにはならない。かならず数%の少数派がマッチしないものだ。どんなに大人気のロックバンドがいたところで、気に入らない人がいるのと同じだ。ビートルズが嫌いな人だっているくらいだし、それはわかってもらえると思う。

愚策

このとき、この少数派に合わせてスタイルを変えてしまうのは愚策だ。0.1%の反対派の意見に合わせて、99.9%のファンへ迷惑をかけてしまうような内容だからだ。しかし、このような対策を取ってしまう業者は非常に多い。クレームが来た!大変だ!すぐに対応しないと!というだけでスタイルを変えてしまう。ドレスのしわもそういった背景から、尋常ではない神経を使って直すように指導がされていたのである。

全ての根本は「価値観」

話を少し戻そう。写真には整えるべきポイントが山ほどある。しかしながら、なるべく時間をかけずに治す必要がある。そのためには優先順位を見出す必要がある。しかし、その優先順位を決めるための「価値観」はどうだろうか。そう、非常にグラグラしているのである。

本来、写真を販売するのであればこの「価値観」こそを販売するべきだと僕は思う。「ドレスの細かいシワよりも表情を優先しますよ」ということをそもそも打ち出していれば「しわの方が表情より大切」というお客様は商品を買わずに済む。(まあ、持ち込み料がある限り選択の自由はないのだけれど。)しかし、この価値観を伝えるのは非常に大変な作業だ。だからこそ、ブログで、動画で、メルマガで、あの手この手を使って僕は配信をしているわけだ。

業界全体がクレーム恐怖症

実は、このクレーム恐怖症とも言える現象は写真に限ったことではない。メイクさんや、衣装屋さんも同じ現象に悩まされている。「前髪が指定した形ではなかった」と後日写真を見てクレームが入れば、メイクさんには「常に前髪を直さなくてはならない」ルールが出来る。たとえそれが風の強い中であろうと、挙式の最中であろうと、いつでもだ。実際、乾杯や、キスシーンなんていう「ハイライト」の場面ですらメイクさんが前髪を直しに飛び込んできてしまい、全部写真に写っているなんてケースもある。最悪、メイクさんで隠れて新郎新婦が写っていない、なんてケースすらある。もちろん、これは大問題だ。結婚式本番はやり直しが出来ない。僕らも画面に突然入られたら対応できない場合もあるから、ハイライトの写真が全て台無しになってしまう。

冒頭の話でのメイクさんはまさにこのタイプだった。もちろん、僕の撮りたいタイミングなんて知る由もないので、彼女は悪くない。当然、カメラマンの位置まで意識しながら仕事をするなんて高度な技術を求めているわけではない。しかし、クレーム対策の動きが、別のクレームを引き寄せかねないくらいになってしまっているのも事実だ。せっかくゲストと談笑して笑顔になっているのに、そこに割って入って前髪を直す必要はないのだ。

誤解がないようにお伝えしておくが、このメイクさんに悪いところは何もない。彼女の仕事をこなすために必死になっているだけだ。強いて言えば、この体制を作ってしまった業界が悪い。僕は、この業界の体質を直したいと思っている。僕自身も、メイクさんから見ておかしいところがあるだろうし、他の職種も含めたら直せるポイントはたくさんあるはずだ。結婚式をよりスムーズに、素敵に行う為にできることがたくさんあるはずである。

もっと良い結婚式が作りたい

まだまだ僕自身の影響力が小さいけれど、メイクさん達や他のスタッフともお互いの仕事の価値観を共有して息の合った仕事が出来るような環境を作っていきたい。僕はあたらめてこの日の撮影のあと、そう思った。

追伸:そのための企画も既に練っています。乞うご期待。