50枚、100枚と言われても多いのか少ないのかわからない。そうですよね。僕もそう思います。結婚写真を探しているとほぼ必ず書かれているのがこの枚数です。カット数、お写真枚数など色々な言い方がありますが、相場観がわからないのがもやもやしますよね。今回はそんな悩めるあなたに向けて、枚数の解説をお届けしますよ。
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そもそも、この言葉の意味から始めましょう。枚数、って言えばいいのになぜ「カット数」なんていい方をするのでしょう。不思議じゃないですか?実はここには写真屋さんのちょっとしたニュアンスが含まれているのです。よく使われる言葉を羅列して紹介しましょう。
一番よく言われる言い回しでこんなところでしょうか。ぶっちゃけわかりませんね。僕自身、羅列していて意味不明だと思いました。これを理解するためには、写真屋さんが何をしているのか知る必要があります。時系列で紹介しましょう。
結婚式の当日撮影や、前撮りなど、基本的にプロに撮影してもらう撮影では似たような写真を何枚か撮影されます。同じポーズで、同じ構図で数枚ずつ撮影していくようなイメージです。表情が違うだけ、みたいな感じです。意味合いはカメラマンによって違うのですが、どんなカメラマンも数枚は撮影するはずです。そして、中には「目つぶり」や「半目」と言われるような写真が含まれていたり、明るさや撮影条件を確認するための「テストカット」が含まれていたりします。要するに「いらない写真」が含まれているのです。この「カメラで撮影された状態のまま」の枚数が「撮影枚数」というわけです。
「セレクト」や「ボツ抜き」と呼ばれる作業が撮影後にあります。基本的には、「撮影時に撮れてしまったいらない写真を抜くこと」です。ただ、このあたりの言葉のニュアンスが写真会社さんによって違っていて、それがわかりにくい原因でもあります。実際、セレクトとボツ抜きも多少ニュアンスが違っています。
撮影カットから「良い写真」を選び出すイメージです。比較的、枚数は少なめに絞られるようなニュアンス。
撮影カットから「悪いカットを抜く」イメージです。比較的枚数が多くなります。また、「撮って出し」と呼ばれるデータを納品する会社はこの名前をよく使います(理由は後述)
現像、という言葉を聞いたことあると思います。もともとはフィルムを処理するための言葉ですが、それがデジタルにも転用されて使われている言葉になります。カメラが撮影したままのデータは実はデジタルの信号になっているだけで、写真になっていません。それを写真にする作業が現像です。現像の処理は色々工夫することが出来、その工夫次第で写真の質感を大きく変えることができます。Instagramのフィルターをイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。あれのめっちゃ複雑バージョンです。
実はこの現像という処理はカメラでやることもできますし、パソコンでやることもできます。僕達プロカメラマンの多くはパソコンでやります。なぜなら、自由に内容を細かく調整できるのはパソコンの方だからです。カメラ内での現像はざっくりの調整が可能です。しかしこのカメラ内の現像はなかなか侮れません。カメラメーカーが研究に研究を重ねて調整した設定で現像がされるので非常に綺麗に現像できるのです。
実際、みなさんの携帯電話もこの工程を見えないところでやっています。携帯のカメラも撮影→現像という工程を踏んで写真を作っているのです。しかし現像前のデータは扱いが専門的で難しいので、現像したあとの写真だけが見られるように設計されているというわけです。
で、肝心なのはこの現像を「カメラ任せ」にしているカメラマンと「自分でパソコンを使ってやる」カメラマンがいることです。
先程のセレクトとボツ抜きの話がありましたが、セレクトという言葉を使うカメラマンは多くの場合「セレクト→現像」をします。ボツ抜きという言葉を使う場合は「カメラ任せの現像をするのでボツ抜き作業だけをします」というニュアンスが含まれているのです。なぜ、こんなややこしい言い回しをするのか?それはお客様にツッコまれない為です。お客様の中にもカメラに詳しい方がいるので、「現像はしてるの?」「どんな方法なの?」と聞かれる場合があったりしますし、納品後にクレームとして「現像方法が悪い」なんてことを言い出すケースもあります。そのときに「実は現像してません」となると問題なので「ボツ抜き」という回りくどい表現をして、現像はしてませんよ。というニュアンスで話をするのです。
余談ですが、いらない写真を抜く作業を「ボツ抜き」と言っている会社は「セレクト」という言葉を「アルバムに入れる写真を選ぶこと」という意味で使っているケースが多いです。これは非常に紛らわしいので会社によって言い回しが違う、ということをしっかり押さえておきましょう。
さて、大まかなところが説明できたと思います。他の言葉としては「ポーズ数」「データ枚数」「お写真枚数」といったところでしょうか。実は、これらの言葉は今までに登場した言葉が上手く伝わらないお客様がいた場合に作り出されているのです。
ポーズ数というのは、先程触れた「被写体である新郎新婦のポージングが同じで、写真としての構図も同じようなものが数枚撮影される」ことに起因しています。カット数と言われると枚数というよりもバリエーションの多さと言うようなニュアンスで伝わってしまうケースがあり、説明の入れ違いがおきてしまうのでポーズ数という言葉で説明しているのです。(ぶっちゃた話、写真業者でもこれを理解している人がそんなにいないので、既に混合している場合もあります。要注意)
この二つの呼び方はあまり若い世代には使いません。比較的フィルム写真を知っているような世代に使います。今の40代より上の世代は、写真といったら「プリント」と思っている方が一定数います。しかし最近の写真はデジカメ撮影のデータ納品なので、よくカン違いがあるのです。なので、「データ枚数」という言葉を使って「データなんだよ」というニュアンスを強めているわけです。反対に、プリントまで渡すようなサービスをしているところは「お写真枚数」と書いたりします。結局はお客様に何か言われた時の対応策としての言い回しなのです。
さて、ようやくカット枚数の話です。ほとんどの場合カット数やカット枚数といったら「納品枚数」を指します。特にプラン表に乗っている場合は、「最低保証枚数」の意味である事がほとんどです。最低保証枚数とは、例えば300枚プランの場合、「300枚以上は必ず渡しますよ」という約束になります。つまり、400枚のこともあれば、1000枚のこともあります。
これが難しい問題です。写真屋さんはどこもそれぞれの考えがあって撮影しています。だから枚数が違うんですよね。「たくさん撮ってあげたい派」もいれば「絞ってあげたほうが親切派」もいます。あるいは視野の広さの違いで枚数に差が出ることもあったりして、なかなかこれを言い切ることは難しいのです。実際に僕が見た中では、挙式のみ撮影プランで25枚のプランが最小で、200枚プランが最大です。どうですか?10倍近く違うんですよ。
会場においてあるアルバムや、ホームページに設置されている見本写真、あるいはInstagramにあがっている写真を見て商品を選ぶと思いますが、それらの見本写真は基本的に一枚ずつの単発写真ですよね。インスタにおんなじような写真を連続で上げていたら面白くないですし、アルバムだってそうです。だから、アルバムに乗っている写真はバリエーション別の写真ばかりのはずです。
ですが、今回説明したとおり、同じようなカットは何枚か撮影します。僕達撮影側は、微妙な表情の違いや姿勢の違い等を意識して撮影したりするのでそういうカットを撮影するのですが、結構個性が出るのです。とどのつまり、結局はあなたの好みに合うかどうかです。なので、心配なら「通しのデータ」を見せてもらいましょう。「納品データ」のことです。そうすると、色々好みが見えてくると思います。「あ、こんなところも撮ってくれてるのか」「いい感じだな」と思えたならそれはきっとあなたにあっているのだと思います。逆に疑問点や不安点が出るようなら、あまり合っていないカメラマンなのかもしれません。
インスタや広告にあげられる写真は選りすぐりの一枚です。ですが、あなたが受け取るのは撮影全体のデータなので、もしデータを見る機会があれば流れや量も意識して見るようにしてみるといいでしょう。その上で、カット数のプラン選びをすればいいと思いますよ。頑張って違和感を探す必要はありません。特に問題がなければそれで充分なのです。(正直プロでもそんなに枚数に対してどうこう思いませんから)
あなたの写真選びの参考になれば幸いです。
KOBATONE 小林嘉明
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