写真は早く欲しいですよね?
納期。つまり、撮影からどれくらいで写真がもらえるかは写真屋さんによって違います。でも考えてみてください。今は撮影がデジカメなので、撮影したその場でデータが出来ているはずですから、なんだか不思議ではないですか?いったい、納期の間というのは写真屋さんは何をしているのでしょうか。納期が長い業者と短い業者は何が違うのでしょうか?今日はそんな疑問を解消していこうと思います。
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結婚写真において、「データ」といったら写真のデータのことを言います。昔は写真がフィルム撮影だったので、写真の納品はプリントと呼ばれるもので行われていました。プリントというのは、街の写真屋さんで出してもらえるちょっと分厚い紙に印刷された写真のこと。ちょっとテカテカしたあれです。ほんの10年くらい前までは、プリントされた写真を納品しているのが普通でした。しかし、今はデジカメでの撮影がほとんどです。昔の「フィルム撮影プリント納品」と区別するために、「データ」と呼ぶようになったんです。
ちなみに、プリントと印刷は厳密に言えば別物です。プリントは薬品を仕込んでおいた紙に化学反応を利用して発色させる技術で、印刷は紙の上に色を乗せる技術です。あまり一般にこの言葉の違いが浸透していないので、プリントと印刷は区別されて使われることが少ないですが、写真屋さんが説明で「プリント」と言ってきたらこのプリント技術を指している場合が多いのは知っておきましょう。
納期とは、そのまんまですが「撮影してからあなたの手元にデータが来るまでの期間」を指します。結婚写真の商品には大きく分けると「データ」と「アルバム」がありますが、基本的にアルバムの方が納期が長くなります。そのため、区別をするために「データ納期」「アルバム納期」なんていい方をするケースもあるんです。
写真のデータについては”結婚写真のデータとは?素朴な疑問を解決”も参考にしてみてください。
あくまで、僕が見た範囲ですが、データ納期の一般的な期間は3週間くらいが業界標準だと思います。アルバムと同時に納品される場合にはもっと延びたりします。なぜなら、アルバムは納品データを元に作成されるので、アルバムを作るためには納品データが出来上がっていないといけないのです。
注:僕が今までに働いたことのある写真業者5つと、業界の知り合いなどから聞いた話を元に3週間と言っています。だいたいの業者が3週間なんですよね。中には違うところもあるので過信しないようにしてくださいね。
では、写真屋さんは3週間の間に何をしているのでしょうか。ざっくり言うと下記の工程を行っています。
色々な要素が絡み合う中、写真屋さんは各社競争しているわけです。その結果、「なるべく早く」「なるべく問題なく」「なるべく良いクオリティ」で納品できる期間を探っていった結果、だいたい各社3週間に落ち着いているのです。
データ納品までの短さをウリにしている写真屋さんもあります。確かに、結婚式が終わったら気持ちが高まっているうちに写真は見たいですもんね。早いところでは即日や、中一日なんてところもあるくらいです。三週間の写真屋さんが多い中でコレはかなり短いですよね。すぐにインスタに上げたい、すぐに友達に共有したい、なんて場合には嬉しいサービスではないでしょうか。ただ、他の所が3週間かけているものをそれだけ短く行える場合、もちろん理由があります。少し説明しましょう。
一番簡単なものが、これです。一番時間がかかるのがセレクトと現像なので、コレをしないで済めばかなり時間が短縮できます。上記にリンクを張った”素人でもわかる!raw撮影とjpeg撮影はどちらがいいの?”でも触れていますが、カメラにはカメラ内で現像する機能がついています。つまり、それなりにきれいな状態の写真をカメラが作ってくれるのです。なので、カメラが現像したデータを納品すれば自分で現像しなくて済むので納期はかなり短縮することが可能です。また、「全カット納品」と謳っている場合もこれが目的のケースが多いです。セレクトをしないで済むので、これも時間を短縮する方法なのです。
セレクトとは、撮影したすべての写真から納品する写真を選ぶ行為のことを指します。全部の写真を確認していかないといけないため、非常に時間がかかります。
時間短縮はメリットだけではありません。当然、工程を端折っている分の差はあります。例えば現像は、自分で現像を行ったほうが細かく仕上げることが可能なためしっかりテイストを狙うことができます。セレクトは写真データを見やすくすることも出来ますし、印象を左右する要素でもあります。これらの工程をカットしていることは踏まえて注文したほうがいいでしょう。まあ、ご自身が気にしない、もしくは気にならないのであれば大丈夫だと思います。(理由は後述)
セレクトや枚数に関しては”結婚写真はカット数に注意!良い写真まで捨てられているかも”を読んで下さい。
「いやいや、それは違う。うちは早いし、品質もいいんですよ。」そう言う写真屋さんもきっといるでしょう。実際、スピードを早く高品質なものを作ることも可能ではあります。実際、上で触れたデメリットは写真屋さんの技術によってかなり振り幅があります。中には納期短縮しているとは思えないような美しい仕上げをしてくれる写真屋さんもいるでしょう。もしそうなら素晴らしいことです。それには、ものすごく高い技術が必要だからです。細かい工程の一つ一つ、撮影の工程の一つ一つを「高速に仕上げるため」に最適化していく必要があります。とても努力が必要になることです。
しかし、多くの写真屋さんは「組織」です。所属しているカメラマンのレベルもバラバラです。商品として早さを謳うのであれば「全員が同じように出来る」状態にしないといけません。「〇〇さんは出来るけど、△△さんは出来ない」ではマズいのです。その仕組み化は難航を極めるのは間違いないです。つまり多くの場合、どこかしらを削る方法にたどり着くことになります。
こんな書き方をしていると「納期が短い会社は手を抜いている」「悪だ」と言っているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。大切なのはあなたがそれを求めているか?です。最初にも書いた通り、「早く写真が欲しい」というところにあなたのニーズがあるなら早い納期の会社は最高のはずです。そうですよね?そもそも、納期が標準的な3週間の時間を取っている会社も「充分な時間があるのか?」と言われると疑問です。
なぜなら、修正や現像は「どこまででも」出来てしまうから。時間をかけようと思ったらどこまででもかけられるのです。実際3週間以上の時間を取っている会社は現像や修正などの仕上げ作業への熱意がある場合が多いです。長いところでは2ヶ月のところもあります。「時間がかかってもいいから最高に仕上げて欲しい」と思う気持ちが一番なのであれば、こういった会社にするのがいいでしょう。
しかしながら、ほとんどの会社はこの点を説明しません。というか、できません。写真の知識がそれなりにないとお客様も理解できませんし、説明する側も広く業界を知っていないと難しいためです。ここが本当の問題だと僕は思います。メリットとデメリットがわかった上で選ぶことができればいいですが、それが充分に比較できないまま、理解できないまま選んでしまうことが問題です。後から後悔することになりかねません。
もし、具体的に仕上げのクオリティにイメージがある場合はちゃんと「実際に納品されている」過去の写真を見てから選ぶといいでしょう。インスタの写真は後日キレイにしている可能性があったり、インスタのフィルターがかかっていてわかりにくくなっている場合があるのです。
しかし、ここで無理に粗探しをする必要はありません。あなたが見て問題を感じなければそれでOKなんです。写真は撮る人間や見る人間の感性によって良し悪しが変動するものです。なので、ある人からしたらダサい写真が、別の人からしたらかっこいいことだってあります。問題を感じないということは、あなたと写真屋さんの感覚がマッチしているということ。現像などの深い知識は学ぶのが大変ですが、それなら結果だけをみて判断できます。そもそも、「粗探しをする気持ち」で写真を見てしまうと色々難癖をつけられるものです。メンタルに左右されてしまうものですからね。なので、ニュートラルな気持ちで写真を見て、問題を感じなければいいんです。
例えば、現像を一年かけて仕上げられる時間があったとしても、その良さがお客様に伝わるかと訊かれると「微妙」と言わざるを得ません。僕達プロはマニアックな部分を突き詰めて極めていかないといけませんが、写真をもらうお客様がそこまで求めているかはまた別問題です。僕達が心血を注いで仕上げたこだわりポイントがお客様からしたら「どうでもいい」とか「そもそも気がつかない」ポイントであることは多々あります。
しかし、だからといって「手を抜いていいか?」と訊かれれば答えはNOです。そのマニアックなこだわりの集合体がお客様に「印象」として伝わるからです。一つ一つは確かにお客様にはわかりませんが、それがいくつも重なると「なんとなく汚い」とか「違和感がある」状態になっていくのです。
ここからは、「僕の考え」をかなり書きます。
僕達がかける労力には「効率」があるように思います。具体的に数値化できるものではありませんが、例えば、一時間の手間をかけて写真を仕上げた時に「お客様から見てもグッと良くなったと感じる部分」と「お客様はそれほど変化を感じない部分」があります。僕たちはこの部分を見分ける能力が必要になります。そして、最大効率でお客様からみて良い写真に組み立てる必要があるのです。
なぜなら、僕達の集中力には限界があります。写真を仕上げるときにはその集中力が最大に発揮できる状態の中で仕上げるのがいい、というのが僕の考えです。写真を仕上げる感覚を伝えるために、1つあなたにしてもらいたい事があります。例えば、あなたの目の前にある建物を見てみてください。建物というのは厳密に水平垂直を守っているものではないのですが、それをチェックしてみてほしいのです。はい、ここで質問です。「あなたの目の前にある壁は右上がりですか?それとも左上がりですか?」よ〜く見てみてください。よ〜く見てくださいね?
・・・見ましたか?なんだか、「見ればみるほどよくわからなく」なりませんか?実は写真の仕上げも同じなんです。人間の目って不思議なもので、心理状態にも左右されますし、同じものを見ているとだんだん目がなれてしまって状態が変わってしまうことが多々あります。じーっくり時間をかけて一枚の写真の色を直していると「赤っぽい気がする」と思って赤を弱くするんですが、さらにずーっと見ていると今度は「黄色っぽいんじゃないか?」って思ってきたりします。目がなれてしまっているんですね。実際、10分くらい休憩を挟むと「なんでこんな色にしたんだろ?」って思うことすらあります。
つまり、感覚が新鮮さを持っているうちに処理すべきだと思うんです。鉄を熱いうちに打つように、飴細工が固まる前に形をつけるように、写真も「最適な時間」がきっとあると思っているんです。マニアックな項目がたくさんあるんですが、それを自分の集中力が最大限持つ時間内で上手く処理するように仕組みをつくるのが大切だと思っています。
最後にポイントをまとめようと思います。
という感じです。キチンと知って自分に合っている写真屋さんを選びましょう。
良い写真屋さん選びを応援しています。
KOBATONE 小林嘉明
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